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40/40(フォーティ/フォーティ)

人間ドックで胃に5cmの腫瘍が見つかり、GISTの可能性が高いと言われてからのてんやわんや。

内視鏡検査だよ。

3/5(火)

とうとうこの日が来てしまった。

内視鏡検査である。

お尻の穴からカメラ突っ込んで大腸の中を見るアレである。

前日の昼夜は事前に渡されていたレトルト検査食を食べ、この日は朝から絶食。

水かお茶は制限ないということで、めいっぱいお茶を飲む。

しかし、尿は出てもうんちは出ない。

これは戦う前から不穏な予感…。

検査は15:15からの予定で、その4時間前に来院しろと言われてるので、その通りに病院に出向く。

受付票を手に検査室に行くと、まず血圧を測る。

上が116、下が68。

看護師さんはちらっと見て「大丈夫ですね!」と言うと、早速中に案内してくれる。

そこには4人のおっさんと1人の中年女性がいた。

デスクの脇に置くようなサイドワゴン的なやつとそれに向かい合う椅子がある。

1つだけ空いてる椅子があって、看護師さんはそこに座れという。

三段ワゴンの上の段に中身のたっぷり入ったビニール容器と空のビニールカップ、プリント用紙とボールペンがある。

二段目に荷物を置けと指示され、椅子に座る。

看護師さんは時計を見つつ、プリント用紙にボールペンで時間を記入した。

「今から10分おきに下剤を200mlずつ飲んでもらいます。飲んだら、チェックを入れてください」

ふむふむ。

「5回分、1リットル飲んだら、次は持ってきて頂いた水分を200mlずつ3回に分けて飲んでください。口の中が乾く薬なので、乾いたら飲んで大丈夫です」

そう。事前に500mlの水かお茶を用意するよう言われている。

絶対500mlが1本では足りないだろうと、綾鷹とほうじ茶の2本を持ってきた私、正解!

綾鷹をワゴンの上段に置いて待機する。

下剤の最初の1杯は看護師さんが注いでくれた。

ビニールのコップには200mlのところにマジックで線が書いてあるので、その通りに入れればいいのだ。

それからワゴンの横にぶら下がってるラミネート加工した紙を見せられる。

そこにはうんちのイメージ写真が5種類貼ってあった。

1番は茶色で固形物のある、いわゆる下痢時のうんちである。それから徐々に固形物が減って色が薄くなり、5番は薄黄色の澄んだ状態のイメージ写真であった。

「出た物の番号に丸を書いてください。固形物がなくなって透明になったら、呼んでください。5番になったら検査開始です」

なんか道は長そうだ。

そうして、下剤&うんちとの戦いの火蓋は切って落とされた。

まず最初の1杯。

「!」

美味しい!

甘くて、ちょっと酸味がある。

バリウムより全然美味い!

これなら2リットル余裕じゃね?

下剤を飲むのが苦しいと聞いていたが、これなら楽勝だぜ!イェア!

余裕が出たので、壁面のテレビを見る。

日テレだった。3分クッキングが始まる。

これはヒルナンデスも観れるのでは?

火曜のコーデバトルを見るのが好きな私。

ますますテンションが上がる。

そして、時間潰しに本を持ってきた方がいいと書いてあったので「バチカン奇跡調査官 ジェヴォーダンの鐘」も持ってきた!

もしかしたら、読み終えちゃうかも??

とウキウキしてると、看護師さんに言われた。

「お散歩してきて下さい。歩いた方が腸が刺激されるので」

と追い立てられる。

周りのおっさん達もウロウロしている。

隣の中年女性は………入れ替わってる!?

同じような髪型をし、顔も似ているが服装が違う。

「!?!?」

そこへ先程の女性が戻ってきた。

母と娘らしい。片方が検査で、もう片方は付き添いなのだ。

あービックリした!

私はスマホを手にお散歩に出た。フロアをぐるりと周りつつ、スマホを見る。

戻ってくると、下剤2杯目の時間。

ゆっくり飲めと書いてあるので、ちびちび飲むけど、3分で飲み終わってしまう。

まだ便意は来ない。

注意書きを見ると30〜90分後に出ると書いてある。

じゃあ、まだまだだなー。

おっさんのうち1人はおとなしく本を読んでいる。他のおっさんはウロウロしては水を飲んでいる。

そうこうしているうちに下剤1リットル分を飲み終えた。

しかし、うんちは出る気配を見せない。

おっさん達はトイレに行っては看護師さんを呼ぶ。

確認してもらわないと下剤地獄は終わらないのだ。

「まだ固形物があるね!」

「ええー」

「下剤飲んで!頑張って!」

おっさん落胆。

また別のおっさんが呼ぶ。

「まだまだ出るよ!頑張って!」

ダメ出しの嵐。

ひええ…厳しい!

おっさん達は話し始めた。

「今まで4回やって、今日5回目」

ベテランやな、おっさん!

そのベテランおっさんは看護師さんに言った。

「腸が長くてー」

だから、うんこがなかなか出ないらしい。

「そういうことは早く言ってよねー」

看護師さんは容赦なく下剤を追加する。

1リットル飲んでも便が透明にならないと、下剤が追加されるのだ。

賽の河原で石を積んでは鬼に崩されるというシーンが浮かぶ。

下剤やら水を飲んではトイレに通うおっさん。

それでも「ほら、飲んで!」と下剤を追加する看護師さん。

隣のおっさんは下剤を飲みたくないのがありありと分かる態度である。

水の入ったコップを横に置き、どちらが下剤か見分けできないようにする。

策士やな、おっさん。

「ビールでも1リットルは苦しいのになあ」

ぼやくおっさん。

いや、ビール1リットルは大ジョッキ2杯だろ?余裕ですけど?

「泡が飲みたいわー」

他のおっさんも同調する。

そうこうしているうちに下剤地獄から卒業する者が現れ始める。

「うん、OK!荷物まとめてー!」

今度は追い立てられるおっさん。

「検査は何時?13時?時間が近くなったら来て。甘いジュース、飴、ガムは禁止!」

看護師さんのマシンガントークを背に、野に放たれるおっさん。

早く便が透明になっても、検査は早く始まらないのか。

そうしている間にも、おっさん達は続々と卒業して野に放たれる。中年女性も連れ立って去っていく。

残されたのはおっさん2人と私。

おっさんは下剤を追加されても飲みたくなくてウロウロしている。

しかし、私は相変わらず便意が来ない。

本を読んだり、ヒルナンデスをぼんやり見ていると、横に人の気配が。

「!」

そこには夫がぬぼーと立っていた。

「何故ここに!?」

病院行くって言うのを「来なくていいから!」と散々言っておいたのに来てしまった。

夫は通りすがりの看護師さんに言った。

「付き添いなんですけど、ここにいていいですか?」

看護師さんは私を見た。

「具合が悪いんですか?」

「いや、全然」

「じゃあ、外で待っていて下さい」

あっさりと追い出される夫。

「終わるまで何処かで時間潰してこい」

「郵便局行ってくる」

そのまま終わるまで戻って来んな。

まだ意識もはっきりしている年齢で付き添いとか恥ずかしい。

1人にしろ!

そして、私は待ちかねていたヒルナンデスの格安コーデバトルをゆったりと見た。

そしたら、来たよ!

待ち望んでいたあの方が!

ぐるるるると鳴る腹!

便意

トイレに駆け込んでやっと1回目のうんち。

まだふつーの下痢気味うんちである。

戻って、プリント用紙の1番に丸をつける。

そうして何度かトイレに行き、順調に色が茶から黄色へと変わったが、まだ固形物がちょっとある。

もう少し。

しかし、そこで便意がピタリと止まった。

おいおい、マジかよ…。

試しにトイレに行って座ってみたが、何も出ない。

こんなところで止まるなよー。

まだ看護師さんに1回も見せていない。

おっさん達とのやりとりから、ちょっとでも固形物があったらアウトというのを学んでいたからだ。

自分の席に戻ってお茶を飲んでいると、看護師さんが様子を見に来た。

「どうです?」

番号を見る。4までしか丸がついていない。

「止まっちゃった?下剤追加する?」

「お願いします」

自分の頑固な便秘具合を知っているので素直に追加をお願いする。

看護師さんは残り1リットルの下剤と新しい紙を持ってきた。時刻を5つ書く。

「また同じように10分おきに200ml。終わったら、そこまででいいです。あと次に出たら教えて下さい」

ここからが本当の地獄の始まりだった。

あれだけ美味しいと思った下剤が、口に含んだだけで不味い。なかなか喉を通らない。

少量ずつしか飲めず、なかなか減らない。

しかも3回目まで飲んでも便意が来ない。

4回目。

来た!

便意様が来た!

トイレに駆け込む。

薄い黄色。

「すみませーん!」

看護師さんを読んで、うんちチェック。

「合格!ちょっとあるけど、大丈夫!」

やったー!

飲んだ下剤、1.8リットル。

やっぱり下剤を2リットル飲むという話は本当だったのだ。

荷物をまとめていると、看護師さんが残った下剤を回収する。

それから空のペットボトル2本を指して

「これはいらない?」

「はい」

「じゃあ、これは捨てるね」

ここでワンポイント。

飲んだペットボトルはすぐ捨てないで取っておいてね。

水分をどれだけ飲んだか、チェックするので。

私は3本目の途中まで飲んだよ。3本目は自販機で買ってきた。

しかし、伊右衛門のペットボトルはめっちゃ量が少なくないですか?

500mlもなくて435mlしか入ってない。もし500ml持って来てと言われたら、量に注意してください。

荷物をまとめると、今度は検査着に着替えます。

「金属は外してください。ブラは?」

「してます」

「それ取ってください」

尻穴からカメラ入れるのに胸も関係あるとは思ってなかった!

狭い更衣室で着替え。

膝丈の検査着の下に、尻がぱっくり開いた紺のぺらっぺらのパンツを履く。

着替えたら、お腹の動きを抑える注射。

「筋肉注射です。利き手はどっちですか?」

「右」

「じゃあ、左に打ちますね」

左肩に注射器がブスリ。

「指先痛くないですかー?」

めっちゃ痛い!

針の刺さってるとこが!

採血よりずっと痛い。

と思ってる間に注入おしまい。

「薬が早く効くように揉みますね〜」

うにうに揉まれて、注射は終わり。

いよいよ、本日のメインイベント!

大腸の内視鏡である。

診察台の上に乗り、左を下に横向きになる。足は曲げる。

最初に医師は言った。

「薬を塗ります。指が入りますから、気持ち悪いと思います」

で、ジェル状の薬をぬりぬり。

何か入ってくるのは分かるけど、痛くない。

そりゃ、便秘明けのウンコの方が指より太いしな。

それからいよいよカメラが入っていく。

肛門は何か入ってるのが分かるけど、内臓に入っちゃうとよく分からない。

初めに奥まで入れて、戻りつつ大腸の中を見ると聞いている。

腹の中で何かがごにょごにょ動いている。

「上を向いてください」

言われて仰向けになると、看護師のお嬢さんが膝を立てろと言われ、左足の上に右足を乗せろと言う。

「痛かったら言ってください」

足を組むだけで痛い?

と思ったけれど、意外と下になった左足が疲れてくる。

でも、カメラがうにうに動いてるし、もうすぐ終わるだろう。

そう思ってた私に、医師は言った。

「奥になかなか入らなくて…横向いてくれる?」

入ってない?ですと?

終わりだと思ってたのに、始まってすらいなかった!

この時の絶望!

終わりが見えない…!

指示されて、また横向きになる。

医師は「形が悪い」とか「腸が長い」とか色々呟いている。

腸が長いなんて初めて知ったよ!

後で聞いたところに寄ると、腸が長いと便秘しやすいらしい。

後ろで「ここの黒い影は内臓です」「そうなんですね」などと会話してるのが聞こえる。

人の内臓をレクチャーに使うなー!

私だって、初心者なのに!

そういうのは5回目のベテランさんでやってください!

そうしてる間も腹の中をグリグリされて、さすがに痛い。

「痛くないですか?」

「痛いです」

「何処ですか?」

看護師だか技師だか分からないお兄さんが腹を抑える。

「左の脇腹…」

腫瘍が押されて痛いのだ。

それとカメラがグイグイ食い込んで腹の中が痛い。

「あと真ん中も…」

お兄さんがお腹を抑える。その手があったかい。

これは…。

惚れてまうやろーーーー!!!

お兄さんは腹をぐにぐに揉む。

中の内臓を掴んで、カメラが進みやすくしているのだ。

そうしてやっと奥にカメラが入った。

「これから戻りながら見ます」

やっとか。

また仰向けにされる。

そうすると中の映像が見れる。

しかし、私は強度のど近眼。

何やら肌色と赤い何かとしか分からない。

その後は順調にいって終わり。

最中は空気を入れられたり、終始うんちを漏らしてる感覚があったりして落ち着かなかった。

オナラ出そうなら出してくださいねーとは言われているが、空気だけでなく実が出る感覚である。

そしてカメラが抜けるのは呆気ないほどである。

終わったら、医師による解説タイムである。

画像を見ながら、話を聞く。

「綺麗な大腸です」

綺麗な大腸。

リピートアフターミー!

綺麗な大腸。

こんな大変な思いして、見る必要なかったのでは?

「切れ痔はあります?」

「ないです」

「(便潜血が)2回に1回しかないので、切れたのでしょう」

切れ痔の宣告。

「このように毎回調べてください。それか5年に1回ずつ検査するのもいいですね」

ファイブイヤーズアフター、この検査再来!

つらっ!

そこで医師の話は終わり。

「トイレでお尻拭いてから着替えてください」

言われた通りにして、検査室を後にした。

時計を見ると、16時。

1時間もカメラと格闘してたことになる。

マジかよ…。

腸が長いというだけで、こんな目に遭うとは…。

しかも便秘もそいつのせい。

長くていいことはない。

そうそう。

検査室を後にする前に色々注意事項を聞いた。

「今日の夕飯はお粥やうどんのような消化にいいものを少しずつ食べてください。便器の中が真っ赤になるような事があったら、電話してください」

消化のいいものかあ。

しかし、ポリープを切除したのにピザ食った友人を知っている。

廊下のベンチで待っていた夫が言った。

「夕飯は何でも好きなモン食べろ」

「カツ丼!」

カツ丼とケーキを買って帰った。

どうなる?私の腸?

その結果はまた後日。